荷役災害防止のための診断結果
~好事例と改善アドバイス~

(厚生労働省委託事業)

荷役災害防止の改善事項、好事例などのご紹介
(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会

 荷役ガイドラインに対する荷主等の皆さまの取組を把握するために、当会の労働安全コンサルタントや労働衛生コンサルタントが診断員として事業場を訪問させていただきました。
現状についての診断をさせていただいた結果、改善をお願いした事項や好事例等把握をすることができましたので、その事例をご紹介いたします。
是非参考としていただき、荷役災害の防止にご尽力を賜りたいと存じます。

→ 事例1 製造業(印刷業)
→ 事例2 陸運業
→ 事例3 製造業(化学工業)
→ 事例4 製造業(鉄鋼業)
→ 事例5 製造業(鉄鋼業)
→ 事例6 製造業(鉄鋼業)
→ 事例7 製造業(機械器具製造業)


事例1 製造業(印刷業)

1 好事例(安全対策上有効といえる措置や他の事業場の模範といえる措置等)

パレット上の製品(荷)は、フィルムで巻かれ荷崩れ防止が徹底されています。

2 改善の検討をお願いした事項

(1)フォークリフト等の走行路を明示し、作業者のはさまれ防止対策を徹底してください。
(2)トラック荷台への昇降用はしご又は脚立が準備されていますが、運転者に使用することを徹底して下さい。
(3)空パレットの積み上げ高さが2mを超える箇所があります。「はい作業主任者」の配置が必要です。技能講習を受講させ選任して下さい。

3 現場安全診断等に対する事業場のご意見

非常に役に立ちました。
会社外の人に診断をしていただくことで、日頃の当り前の作業の中に小さな危険があること、それが複合して大きな危険・事故につながることを新たに自覚しました。「安全の見える化」で災害のない職場環境を構築してまいります。


事例2 陸運業

1 好事例(安全対策上有効といえる措置や他の事業場の模範といえる措置等)

(1)集荷物の仮置き場所での物品の養生と通路の区画が明確にできています。
(2)プラットホームへの昇降路(斜路)で転落防止の幅木が設置されています。

2 改善の検討をお願いした事項

(1)プラットホームの区画線が消えかかっています。区画線の代わりに、頭上の梁等を利用してプラチェーンで明示を検討してください。
(2)フォークリフトの駐車場では、逸走防止のため歯止めを設置して下さい。
(3)階上のベルトコンベアーに立入禁止の表示をしてください。(例:プラチェーンで明示する。)

3 現場安全診断等に対する事業場のご意見

非常に役に立ちました。
診断によって、荷役ガイドラインの実務との結びつきの理解を深めることができました。
また、実際現場を見ていただいて、改善の方法を色々教えていただき、非常に有意義なものになり、有難うございました。
参考にさせていただき、職場における安全度がより高まっていくように、安全な作業環境づくりに積極的に取り組んでいきたいと思います。

事例3 製造業(化学工業)

1 好事例(安全対策上有効といえる措置や他の事業場の模範といえる措置等)

(1)荷役作業時の墜落防止対策(屋内)
・ 荷受け場所の中央に移動式プラットホームを設置し、昇降設備とトラック荷台からの墜落防止を図っています。
・ プラットホームでは、フルハーネスの安全帯を着用しています。

(2)荷役作業時の墜落防止対策(屋外)
・ 屋外のトラック荷役場所に安全帯取付設備を設置しています。作業者は安全帯取り付け設備の支柱にセットされたフルハーネスの安全帯を着用し、可動式の親綱にフックを取り付けます。

(3)荷役作業の負荷軽減対策及び墜落防止対策
・ トラックの荷台と同じ高さの積込台の設置により、作業者の作業高さで荷の積み込みができるようになっています。また、両側に安全柵があり墜落の防止対策ができています。

2 改善の検討をお願いした事項

(1)タンクローリー等からの墜落対策について、作業頻度の少ないものについてもリスク低減措置をお願いします。
(2)貨物自動車運転者の腰痛予防として、荷役作業前のストレッチが効果的です。検討をお願いします。

3 現場安全診断等に対する事業場のご意見

役に立ちました。
安全の取組の振り返りや、今後の展開などについて、考える良い機会になりました。
改善の検討をお願いする事項については、取扱いや受け止め方が不明と感じ、現場安全診断員に質問をさせていただき、理解をすることができました。

事例4 製造業(鉄鋼業)

1 好事例(安全対策上有効といえる措置や他の事業場の模範といえる措置等)

(1)次のように荷主と陸運事業者等が密にコミュニケーションを図り、協働して安全衛生活動を進めています。
・荷主の安全衛生委員会に陸運事業者が出席
・荷主と陸運事業者の定例安全会議等で、合同リスクアセスメント、安全対策検討、HHの改善検討などを行っています。
・各階層での定期的な合同安全パトロールを実施しています。

(2)荷積み場所でトラックの片側は固定式プラットホーム、他の側は移動式墜落防止柵を使用し、両側面での墜落防止対策を行っています。

2 改善の検討をお願いした事項

(1)荷台からの墜落防止用のプラットホームがありますが、片側のため墜落のリスクが残ります。また、シート掛け作業では両側とも墜落防止対策がないまま作業をしているケースがあります。さらなる安全対策と、当面の安全対策の実施を検討して下さい。

(2)プラットホーム昇降時の転倒防止及び作業性の面から、昇降部分には片側だけでなく両側に手すりを設置するよう検討してください。

3 現場安全診断等に対する事業場のご意見

役に立ちました。
今回安全診断をいただき指導いただいた内容は、認識していたが、対応の難しい場所であったり予算等からなかなか対応できていないのが現状であったが、今回の安全診断を機に、再度リスクアセスメントを実施し、リスクの低減、排除に繋げられるよう、現場作業者、管理監督者を中心に進めていきたいと考えます。


事例5 製造業(鉄鋼業)

1 好事例(安全対策上有効といえる措置や他の事業場の模範といえる措置等)

(1)工場内でトラックに荷を積卸しする場所には、両側にプラットホームを設置し墜落防止措置を行っています。また、その他の場所で墜落危険のある箇所には転落防止ネットも設置しています。

(2)可能な場所には、ネットの下に緩衝マットも敷いています。

(3)屋外にもトラック側面に付けるプラットホームを設置しています。①③とも昇降部には両側に手すりが設置されています。

(4)プラットホームの端部には作業禁止の赤い印があり、危険の見える化がされています。

2 改善の検討をお願いした事項

(1)荷役災害防止担当者の指名をお願いします。また、担当者には必要な教育をお願いします。この教育については、日本労働安全衛生コンサルタント会が国の委託事業として講習会を実施していますのでご参加の検討もお願いします。

(2)自社でフォークリフト等の運転者に対する安全衛生教育を行っていますが、ガイドラインに基づき実施が求められている教育と比較し十分かどうか検討をお願いします。

3 現場安全診断等に対する事業場のご意見

非常に役に立ちました。
荷役ガイドラインに関する内容について詳しくご指導いただき有難うございました。
荷役災害防止担当者を指名し、必要な安全活動を実施し、なお一層の改善を図ります。


事例6 製造業(鉄鋼業)

1 好事例(安全対策上有効といえる措置や他の事業場の模範といえる措置等)

(1)屋外のトラックからの積卸し場所に、手すり付きの作業床が設置されており、荷役作業時の墜落・転落災害防止が図られています。

(2)移動式プラットホームも用意されており、荷役作業時の墜落・転落災害の防止が図られています。

2 改善の検討をお願いした事項

(1)材料置場明示の黄色ラインが消えかかっていて見えづらくなっていますので、整備の検討をお願いします。

(2)歩行者通路の一旦停止の明示が劣化しているところがありますので、再点検をお願いします。

(3)トラック荷台後方からの荷台への昇降について、脚立使用と記載してありますが、脚立では天板に乗る可能性もあり危険ですので、手掛かりが付いた立ち馬への変更検討をお願いします。

3 現場安全診断等に対する事業場のご意見

役に立ちました
荷役作業における災害防止に関する安全診断有難うございました。荷役作業における安全での管理面で色々勉強になりました。
今後は、「荷役作業安全ガイドライン」をもとに安全管理レベル向上に努めます。
今後ともご指導よろしくお願いします。


事例7 製造業(機械器具製造業)

1 好事例(安全対策上有効といえる措置や他の事業場の模範といえる措置等)

(1)荷役作業を行う場所にトラックの荷台の高さの「プラットホーム」を設置し、その上にレールで移動可能な「安全ブロック」を安全帯取り付け設備として設置しています。実際に作業するトラック運転者等の作業者には、ハーネス型の安全帯を貸与して墜落・転落災害防止を図っています。なお、車の鍵と引き換えに安全帯を貸与し、安全帯返却後に車のキーを返すことをルール化し万全を期しています。

(2)フォークリフトのシートベルト使用を徹底するため、シートベルトを掛けないと運転やリフト操作ができない装置の搭載を順次行っています。

(3)トラックに荷を積み込んだ後のシート掛けが高所作業となるため、シートをクレーンで吊り上げて荷の上に掛ける工夫をしています。

2 改善の検討をお願いした事項

(1)荷役ガイドラインの趣旨を担当者や関係者に周知をお願いします。また、ガイドラインに基づく教育の実施をお願いします。なお、本年度は厚生労働省の委託事業として荷主等の担当者に対する教育を無料で実施していますので、今後このような機会があれば活用することも考慮ください。

(2)好事例の取組について、「安全の見える化運動」の一環として、実際に使用している状況の写真等を掲示して、使用者や関係者の意識向上や啓発に役立てていただきたくお願いいたします。

3 現場安全診断等に対する事業場のご意見

役に立ちました。
弊社はメーカーであるため、荷役業務に係る業務のウエイトは小さく、荷役業務に特化した安全管理体制は構築できておりません。
しかしながら、製造請負会社への安全管理と同じ枠組みで物流請負会社にも弊社の安全管理体制に参画いただき、共に安全管理レベルを高められるよう、取り組んでいるところですが、今回実施いただきました『現場安全診断』により、荷役ガイドラインについての知識不足を認識いたしました。
つきましては、以降、ガイドラインを周知する機会を設けることにより、荷役業務に対する安全管理レベルを更に高めて参ります。