☆ 令和4年度 労働安全研修会のポイント
1.建災防方式「新ヒヤリハット報告」の考え方と活用について
日本大学 生産工学部 創生デザイン学科 教授 鳥居塚 崇氏
新ヒヤリハット報告は単に統計上のヒヤリハット収集ではなく,可能な限りのヒヤリハット発生減少を目的としたものである。ヒヤリハットには必ずその原因がある.本報告様式はその原因を探り,それを元に対策に繋げようというものである.それにはメンタルヘルスやワークエンゲージメント等も含まれる。そして新ヒヤリハットで最も特徴的なのはヒヤリハットを事故を回避した事象ということでポジティブに捉えている点である。なぜ回避できたか,それにはなにが必要か等の質問も設けてある。これはレジリエンス・エンジニアリングの考えに基づくものでもある。これらも含め,新ヒヤリハット報告を通じて,新しい事故防止の考え方について概説する。
2.リスクアセスメント活用における新提案とこれからの労働安全-SDGsとWell-beingの実現のために
国立大学法人長岡技術科学大学 技学研究院 システム安全工学専攻 産業安全行動分析学研究室 准教授 北條理恵子氏
近年の産業現場は、機械と人が共存・協調するスタイルへと変化し、「協調安全」という新たな考え方が議論されている。それに伴い、リスクアセスメントの考え方や方法論にも変化が見え始めている。加えて、世界の至る所で、ディーセント・ワーク(やりがいを持って仕事をする)を推進する「作業者のwell-beingのあり方」が重要視され始めている。人々のwell-beingについては、古くから心理学の領域で議論・体系化されている。しかしながら、作業現場における作業者のwell-beingについては、今まで議論されたことがなく、全く新しい領域である。本講演では、作業者のwell-beingを融合させた協調安全に伴う新たなリスクアセスメントの考え方を提案し、検証実験事例を紹介する。
3.化学物質の危険性に対する自律的管理に求められること
(独)労働者健康安全機構 労働安全衛生研究所 リスク管理研究グループ 部長 島田行恭氏
2021年7月に「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 報告書」がまとめられ,公開されている.今後,規制対象となる化学物質が追加されるとともに,化学物質の自律的な管理を基軸とする規制が強化され,事業場はそれに対応するための体制を確立し,自主的な取り組みを行うことが求められる.一方,同検討会では化学物質の有害性への対応を中心に議論されていたが,本研修では改めて「化学物質の危険性とは何か」について考えるとともに,事業場における自律的管理として,具体的に何をどのように取り組んでいくべきなのか,コンサルタントの方々に期待することも含めて考察したい.